久坂部羊 『悪医』&『廃用身』2017/05/20



何の気なしに、癌についての本を読んでみました。
そうすると、内容にびっくりです。
『悪医』という題名ですが、出てくる医師たちはそうではありません。
どの医師も末期癌で手を尽くすことができない患者たちと真摯に向き合おうとしています。
しかし、医師たちの思いは患者には届かないのです。

末期癌に対して医師たちはこれ以上治療を続けると命を縮めるということを知っています。
そのため治療の打ち切りを宣言します。
最期を好きなことをして過ごして欲しいという気持ちからなのです。
一方、患者は医師から見捨てられたと思います。
本の中に、これ以上治療の余地がないということは死ねというのと同じだと医師に告げ、別の病院に行き、次々と色々な治療を受ける患者が出てきます。
医師は若く、言葉が足りないところもありますが、患者が残した言葉をずっと忘れず苦悩します。

自分がもし医師に言われたら、どうするだろうかと考えました。
私なら、病気になっていないからこそ言えるのかもしれませんが、たぶん、辛い治療をしないようにするのではないかと思います。
どんな副作用でも我慢してみせるなどと言えませんわ。
でも、末期癌になったらどうなんだろう。
今だったら? 80歳を過ぎていたら?

現役の医師の書いた考えさせられる小説です。


久坂部さんの本がおもしろかったので、デヴュー作を読んでみました。
『廃用身』とは「脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、回復の見込みのない手足のこと」だそうです。

本を開くと、アレ、変だなという思いが起こります。
これはフィクションなのかノンフィクションなのか、わからなくなるからです。

老人のデイケア施設、「異人坂クリニック」の院長の漆原医師は介護職員と介護する家族たちの大変さを思い考えをめぐらせていました。
介護の時に麻痺により動かない手足が急に動き邪魔になったり、重い体重のせいで移動させるのも一苦労なのです。
彼の考えついたのは、廃用身を切断することでした。
そうすれば、介護時に麻痺した手足が動くこともなければ、体重も減り、移動させるのも楽になり、介護職員や自宅で介護をしている家族の負担も減るはずなのです。
彼は介護職員に彼の考えを説明し、家族や本人に話をした上で本人が望めば麻痺した手足を切断することにしました。

老人介護に画期的な方法かと思われた廃用身切断(Aケア)でしたが、週刊誌にセンセーショナルな記事として扱われ、Aケアを施された老人の殺人事件などが起ったため、漆原は絶体絶命の危機に陥ります。

老人介護は現実に起こっているし、どれほどの人が苦労していることでしょうか。
フィクションではありますが、これから遠くない未来に老人人口がもっと増えるとこのようなことが起こるかもしれないと思えるのが怖いです。

怖いもの見たさですが、久坂部さんの他の作品の読んでみようと思います。


最後にほんわかした写真を載せておきましょう。


兄犬の寝相です。
片耳が・・・。
いつも笑わせてくれます。